映画「火天の城」の感想

映画「火天の城」は第11回松本清張賞にも選ばれた山本兼一の同名小説を映画化したもので、熱田の宮番匠(大工)岡部又右衛門が苦難の末、安土城を築城するまでの姿を描いている。戦国時代と言えば武将、戦乱とのイメージであるが、あえて庶民の視点にたって描いているのは面白い。多少、スペクタル的な要素もある題材であるが、映画ではヒューマンドラマとの色彩が強い。

安土城は謎に包まれた城であるため、先ずはどのような城なのか興味があった。安土城は五層七階の楼閣を持つといわれた巨大建造物であるため、それの実像を映像化するのは無理と見えて映像は多少不明確であった。しかし、設計のコンペで使用された模型は、殆ど資料が残っていない現在、映画スタッフが考えた城の姿であろうが、城の全容がイメージできてそれなりに面白かった。また、京の宮大工や隆寺大工の模型も面白かった。

「火天の城」というタイトルから想像すると最後は安土城が炎上するのでないかと思っていたが、残念ながら大スペクタルを描くのは無理と見えて築城したところで映画は終わっている。

それでも、巨石を運ぶ場面などでは多くのエキストラを雇いスペクタル的な要素も精一杯表現しようと努力していたのは認める、しかし、どうしても物量映像ではアメリカ映画や中国映画などには負ける。あまり大工事のイメージが伝わらなかった。

技術的な側面や時代考証は当然行われていると思われるが、リアリティに欠ける内容も幾つかはあり、気になった。巨大な木曽のヒノキを求める姿が描かれているが、これを木曽から琵琶湖の安土まで輸送するとなると、かなりの難事業と思われるが、戦国の時代に可能であったかどうか。また、棟上の段階では巨木がかなり小さくなっていたが、あの大木をどのように製材したのであろうか。小さくカットするのであれば最初から中規模の木を求め、周囲をカットした方がよほど簡単でなかろうか。

また、木を積み上げてから大黒柱をカットする場面があるが、直感的に考えて無理という感じである。その時、木を支えるため大勢で上のものを引っ張つていたが、上のものを引くには体重以上の力を出せないし、この場合は力を出すというよりも身体を紐でしばってぶら下っているのが一番楽な方法で確実であり、科学的なことも考えて少し描き方を工夫して欲しかった。

この映画のメインはやはり工事関係者の人間ドラマであろう。特に、岡部又右衛門と田鶴との夫婦愛が随所に織り込まれているが、なかなか良かった。特に大竹しのぶの演技が良かった。その他のカップルの恋愛関係なども描かれているが、時間が短いため、感情移入というところまでは行かなかった。短い時間で多くを内容を詰め込むのは無理である。

どの映画も同じような人が起用されているが、あるドラマで強烈なイメージを持った人はそのイメージが強すぎてマイナスになることがあり製作段階で考えて欲しいものである。

技術的にはいろいろ気になるところはあるが、戦国時代の大工の姿という珍しいテーマであるため、映画はそれなりに評価できるのでないだろうか。

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