映画「魔笛」の感想

魔笛はモーツアルトの最高傑作のオペラである。これを天才ケネス・ブナラーが第一次世界大戦のヨーロッパに時代をシフトさせて、今回完全に映画化したものである。このオペラの本来の物語は夜の女王やゾロアスタ教の開祖のザラストロなどが出てくる非現実的なファンタジーであり、物語の流れも最初は味方と思っていた人達が悪者になったり、悪者と思っていた人が見方になったり奇想天外なものである。この物語の流れを第一次世界大戦に置き換えても、別に物語が良く理解できるようにはならない。奇想天外な物語の流れは、そのままであり、現実的なものに置き換えても、理解できないことには変りはない。また、今回の映画でも非現実的な場面もまだ残っている。

しかし、そのような物語の流れはどうでもよいのである。魔笛はこの中で歌われる曲がすべて素晴らしいのである。魔笛の主人公はタミーノとパミーナであるが、このオペラはどちらかというと、主人公より、脇役達の曲のほうに聞かせどころが多い。例えば、夜の女王が歌う二つのアリアは高度なコロラトゥが含まれており、並みのソプラノ歌手では歌えないものである。生のオペラではこれを無事歌い終われば、拍手喝采というところである。今回の映画では口を大写しにして、難しさを強調していた。ザラストロも聞かせる。この映画では当代随一のモーツアルトの歌い手と謳われるザラストロ役のルネ・パーペと宣伝している。私の一番好きなのは道化役的な存在のパパゲーノである。彼の歌う素朴なメローディーは万人が親しめるものである。

映画では音楽は序曲からフィナーレまで私の理解している範囲では完全に再現されていたのではないか。映画の場面に合わせて、多少の環境音が含まれているが、音楽を壊すようなものではない。但し、歌詞は字幕を見ていると今回の場面に合わせて多少修正されている気もする。しかし、我々日本人には原作の歌詞も今回の歌詞も理解できないので、何ら違和感はない。各歌い手のアリアなども素晴らしいもので、オペラそのものである。ただ、映画であるため、スピカ−の音を聞くことになるが、若干、高音がうるさいように感じた。

この素晴らしい音楽も、映画の時代設定である第一次世界大戦の戦場をバックに聴いていると、どうも違和感がある。映像が現実味を帯びたものであるため、音楽より、その画面の方に気を取られることがある。特に戦場などの場面はうるさい。音楽との相性も悪いような気がする。魔笛のファンタジー的な良さが失われているのでないかと思う。魔笛は舞台のように場面が単純化されていた方が音楽に入り込めるのかもしれない。

映像として気にいったのは古い飛行機が好きなこともあり複葉機が飛んでいる場面とパンフレットに使用されているパパゲーノが夢の中で鳥と一緒に飛んでいる場面だけである。どのような映像がこのオペラと一番合うのか難しいところであるが、自然やシンプルな建物などの設定の方が合うのでないかと思う。この映画多少は問題があるが、オペラの「魔笛」は日本ではそうたびたび上演されるものでなく、聴く機会はあまりないと思われる。映画の魔笛は、モーツアルトのオペラを完全に聞くことができるので、一見の価値はある。

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