レクチャー「ピアノの歴史」4の感想

3月24日横浜みなとみらい小ホールでレクチャーコンサートシリーズ「ピアノの歴史」の第4回目があった。今回は「ベートーベンとシュトライヒャー ピアノの理想を求めて」を表題にしたレクチャーとベートーベンのピアノソナタとチェロソナタの演奏があった。講師は東京大学大学院教授の渡辺裕さん、ピアノ演奏は渡邉順生さん。チェロ演奏は藤村俊介さんであった。なお、シュトライヒャーとはピアノ製作者の名前である。渡辺先生のレクチャーはベートーベンの楽譜を使用して、古いピアノに造詣の深い渡邉先生の意見を求められながら検証するような形で進められた。

ベートーベン時代のピアノ

ベートーベンが生きた時代はピアノが最も進歩し、変化した時代であった。ベートーベンも7種類以上のピアノを体験しているとのことである。今回のレクチャーでもホフマンとシュトライヒャーのピアノが演奏されたが、明らかに音色や音量が違っていた。この二つともウイーン製であるが、より力強い音量がでるが、繊細に欠けるロンドン製のピアノにも触れているとのことである。

ベートーベンが作曲の基盤としていたピアノは繊細な表現に優れているウイーン製のピアノであり、ベートーベンはフォルティシモの作曲家とのイメージが強いが、本質的にはピアニシモの作曲家、特に初期の作品はその傾向が強いとのことである。また、現在ピアノ表現の基礎を築いたとの評価は必ずしも正しくものでなく、古いピアノ表現との中間的な所に位置付けられるのではないかとのことであった。確かに使用しているピアノが音量的に劣り、繊細な表現に優れているのであれば、この推論は妥当だろう。

それと同時にピアノをオーケストラーの代用品とみなして作曲していたとのことがあるということで、初版の楽譜を使用して説明された。例えば「悲愴」の第一楽章の冒頭では「fp」や18番の冒頭で使用されている「スラーの中のスタカート」のように弦楽器奏法で使用される記号がピアノ曲に見られるとのことである。現在のピアノでも表現不可能ということはないようだが、やはり、昔のピアノの方が楽であるようだ。

また、「月光」の第一楽章ではダンパを外す指定があるが、これを現在のピアノで演奏すると不協和音が多くなるが、ベートーベンの時代のピアノは音の減衰が早く音があまり混じり合わなかったので、それなりの効果はあるようだ。これらは使用するピアノの特性によって演奏法を変える必要があるとのことであった。

シュトラィヒヤーのピアノ

ベートーベンが後年よく使用していたシュトラィヒヤーのピアノは繊細な表現力を失わずに、音量的にも改良されたことで、ベートーベンも満足していたとのことでる。このピアノの減音装置として、弦とハンマの間に布を挟む方法とハンマで叩く弦の数を3〜1の間で調整する方法があるとのことで、音色的にも多様である。ベートーベンはこれらの装置の使用について楽譜で指定しているところがあり、繊細な音色の変化を楽しんでいたのかもしれない。

プログラムの最後に昔のピアノを使用してチェロのソナタが演奏された。現在のピアノで演奏すると音量的にピアノが勝ちすぎるが、昔のピアノではむしろチェロの方が音量的に勝っている。ベートーベンもそれを考慮して作曲しているとのことであった。昔のピアノは木の枠組みに弦が張られているが、これにより現在のピアノより木製の楽器に近かい音をしている。このため、チェロとよく融和しているように感じた。

ベートーベンの意図

ベートーベンの本当とのに意図したことは、やはりその当時の楽器を使用しなければ分からない部分がある。ピアノが進化するにつれ、ピアノの音色が変わっていった。それに伴い楽譜に表現された表情記号も変えなければならない部分が出来てきているようであり、チェルニーなど後の版の楽譜では、当時の人がその点を考慮して、校正したようである。我々が日常CDなどで聞いているベートーベンは楽器が異なるので、本来のベートーベンでないかもしれないが、まあ、硬いこと言わずに現在のピアニストが解釈した方法で楽しむのも良いし、また、昔の楽器を復元して、当時の音を楽しむのも良い。

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