レクチャー「ピアノの歴史」3の感想

2月24日横浜みなとみらい小ホールでレクチャーコンサートシリーズ「ピアノの歴史」の第3回目があった。今回は「モーツアルト クラヴィーア音の深層」を表題にしたレクチャーとモーツアルトのピアノ曲の演奏があった。講師は日本モーツアルト研究所所長の海老澤敏さん、演奏は崎川晶子さんとこのレクチャーを企画・構成されている渡邉順生さん。この二人で「モーツアルト フォルテピアノデュオ」レコードを録音されており、2006年度器楽曲部門でレコード・アカデミー賞を受賞されている。当日もレコードの同じ内容の曲が2曲演奏されたが、フォルテピアノの独得の音色と伴に息の合った演奏は聴き応えがあった。

モーツアルト時代の鍵盤楽器

レクチャーはモーツアルトとピアノの係わりを主題とするものであり、豊富な資料が配布されたが、海老澤先生の話は少しポイントが絞りきれなかったような感じである。幼年期のモーツアルトはまだクラヴィコードを使用しており、成長すると伴にフォルテピアノに接し、年代を経るごとにフォルテピアノの性能も良くなったようだ。モーツアルトが21歳の時にシュタインのフォルテピアノを試奏する機会に恵まれ、その性能の良さに感激して父宛に手紙を出している。そこで、ダンパーがずっとよく効くので、鳴らした瞬間にその音は消える。カタカタ鳴ったり、強くなったり弱くなったりすることもなく、まったく音がでないようなこともなく、すべての音が均一であるとの感想を送っている。

この書簡から反対に考えるとそれまでのピアノは音が均一でなく、雑音が出たのであろうか。また、音の切れが悪く、前の音が残っていたのかもしれない。ただし、改良されたピアノでも現在のピアノより減衰は早く、残響音は少ない。

フォルテピアノ

26歳ぐらいの時、ウィーンでもっと優れたピアノ職人である、ヴァルターのフォルテピアノを購入し、演奏会に使用していたようである。このピアノは現在ザルツブルク国際モツァルテーウム財団が所有し、生家に展示されているとのこと。このピアノで演奏したビデオが紹介されたが、音色は現在のピアノとあまり変らないと感じた。ただし、録音はマイクをピアノの近くに置いたり、イコライザを変えることができるので、その音質を全面的に信用するわけにはいかない。

当日使用されたフォルテピアノはフェルディナント・ホフマン作(ウィーン、1790)と(ウィーン、1795)の2台でモーツアルトが購入した年代より10年近く後に製作されたものであるが、普通の音量で弾いているときには、現在のピアノの音色に大分近づいたと感じた。しかし、高音と低音の音色の違いが大きいことと、フォルテの演奏部分になると、木で出来ているため現在の迫力ある音量は期待できない。モーツアルト時代も協奏曲になるとピアノが負けてしまうので、その点も考慮してモーツアルトは作曲したようである。しかし、音の強弱による表情の変化は最初のピアノのクリストフォリから比べると大幅に進歩してきているように感じる。

また、ピアノの下にオルガンの足鍵盤のような楽器を製造してもらい、低音部を補強していたようである。ピアノ協奏曲 ニ短調 K466の第一楽章の88小節から90小節の自筆稿にはその楽器を使用したと思われる低音部の楽譜が記入されているとのことである。

モーツアルトの作品には強弱記号の指定がないものも多いが、人生の後半の作品になるとこまめに指定している作品もあるようである。やはり、フォルテピアノが改良され、音の強弱による表現力が豊かになってきたことにより、モーツアルトも指定する気持ちになったのではないか。

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